現代医療のハナシ

在宅医療という選択肢

在宅医療とは、入院や外来治療とも異なる「第三の医療」といわれるものです。何らかの理由で治療が困難となった慢性疾患を有する患者が受けるサービスであり、定期的な訪問診療と24時間の電話対応が最も基本的な診療体系となっています。
その診療の場は患者の自宅あるいは施設であり、そこで行われる行為はある程度限られたものになります。しかし、会話を通じて医師が患者とより密接な関係を築けるのです。実際、多くの患者は高齢者であり、さまざまな疾患を抱えていることが多いといいます。そのため、医師は全身のバランスを見ながら診察していくことになります。したがって、携わる医師にはさまざまな疾患に対応できる能力が必要であり、人間を全体としてまた複雑なものとしてとらえる視点も必要です。適切な経過観察や治療を行うこと、そして適切な治療を受けられるように他の機関に紹介すること、すなわち病診連携をとることも重要となります。
たとえば、急性心筋梗塞や脳内出血、あるいは急性腹膜炎といった急性期疾患に対しては、病院における入院治療が必要です。在宅単独では存在することが困難であり、救急体制も同時に必要といえます。在宅医療の観点から見れば、救急体制の整備は在宅の患者が必要なときに、急性期疾患の治療が適切に受けられる体制作りともいえます。その後の慢性期で、リハビリテーションなどを行いながら自宅での治療が可能となった場合でも、通院や入院治療の継続を選択する人が多いです。しかし、在宅治療というサービスを受けることもできます。